孤独が癒されるとき
藤澤量正
釈迦が説法で説いたように「人生は苦である」。だからこそ人間は人生に思い悩み、絶望を抱え、周囲との隔たりを感じていく。
特に現代のような複雑な社会においては、人間関係や愛欲、別離などの悩みが常に付きまとい、大勢の人の中にいるからこそかえって孤独観に苛まれている。
この孤独感は一人一人異なるものの、著者が自身の体験談や、先人の詩や書籍からのことばの引用を交えながら孤独感の超え方の見本を示してくれているのが本書である。
長年の間布教師として全国各地を駆け回る活動をしてきた著者が、喉頭がんで声帯を切除し読経も念仏も唱えられず、説法もできなくなるという、絶望や孤独という感情を経験して来たからこそ、本書で語られる体験談や感動を受けた詩の数々には、我々が囚われている「孤独」から心を解放し、明るい人生に向き合う為のヒントを与えてくれるのだと思わせてくれる。
これからの人生に不安を抱えている人にぜひ読んで欲しい一冊である。
君自身に還れ 知と信を巡る対話
大峯顯・池田晶子
僧侶と文筆家、二人の哲学者による対談集です。
一貫して「言葉の価値」をテーマに、「自分とは」「人生とは」という問いに向き合うための論議が繰り広げられます。情報過多な現代社会を生きる私たちは、日々のコミュニケーションの中で言葉の意味にどれほど理解しているとでしょうか。宗教の分野についていえば、「救い」「信仰」「愛」といった頻繁に用いられているキーワードにどこか疑りを抱く人も少なくないように思われますが、本書では単に概念的な説明で止めることなく、ひとつ一つを深く鋭く検討されています。たとえば「菩薩」という言葉についてどこか合点がいかない池田さんが、大峯さんとの対話の中で「真理に向かっている人」「愛知者」といったように言い換えながら思索を重ねることで、本質的な理解へと向かっていく様子が印象的です。このように言葉に対する先入観を取り除いて理解をめざすという意味では、絶好の仏教入門書であるとも言えるかもしれません。
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