2020年10月のおすすめ本 | ページ 3295 | 築地本願寺

2020年10月のおすすめ本

  • 君自身に還れ 知と信を巡る対話

    大峯顯・池田晶子

    情報過多な現代社会において、私たちは日々のコミュニケーションの中で使われる言葉の意味をどれほど理解していると言えるでしょうか。本書は「言葉の価値」をテーマに、「自分とは」「人生とは」という問いに向き合うための議論が交わされます。宗教の分野について言えば、「救い」「信仰」「愛」などの言葉は頻繁に用いられているがゆえに、その真意についてどこか疑りを抱く人は少なくありません。そうしたキーワード一つひとつを概念的な説明にとどまることなく、深く鋭く検討してゆく過程は本書の魅力の一つ。たとえば、「菩薩」という言葉に合点のいかない池田氏が、大峯氏との対話の中で「真理に向かっている人」「愛知者」のように換言しながら思索を重ねることによって、本質的な理解へと向かっていく様子は印象的でした。

  • 笑う門には念仏あり

    森田真円

    落語の原型が仏教のお説法だと言われていることが本当なんだな、と思わせてくれるぐらい誰もがクスッと笑える話が満載の小咄集である。

    念仏というと難解で堅苦しいと感じられる方も多いと思われるが、著者は“念仏”を、人々の生活にとけこみ、唱えることで仏のありがたみを感じて幸せな気持ちになれるものと捉え、 “念仏”を唱えて悩みや苦しみが解消された時には、そこに笑いがもたらされるのである、と考えている。

    本書の小咄はどこにでもある笑い話だろうと感じられもするが、登場する人々はみんな近しく、親しみを持って接していて、どこか懐かしい雰囲気を漂わせている。この雰囲気こそが本書の“ミソ”でありこの雰囲気があるからこそ温かい気持ちになってクスッと笑えるのでないかと思われる。

    日常生活に疲れた方にはぜひ本書を読んで、懐かしさに浸りながら暖かく幸せなく気持ちを取り戻してほしい、と思わせてくれる一冊である。

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